DX推進の段階毎の企業の課題と考察
2023年11月7日、IPAは、「DX推進の段階毎の企業の課題と考察」を公表しました。同資料は、DX白書2023で分析結果を示した「企業を中心としたDX推進に関する調査」での調査回答企業をDXの取組み成果別に分類し、各グループの企業の特徴を分析しています。今回は、グループ間で取組みの差が大きい項目を一部抜粋して、ご紹介します。
DXの成果別に見た企業の分類と取組み比較
- DXの取組み内容の成果状況に基づき、回答企業を3つのグループに分類(※)。2022年度調査における日本のグループ1からグループ3企業の占める割合は約30%となっている。
- 各グループでの取組みの実施状況を調査した結果、グループ3では戦略・人材・技術それぞれの分野についての取組みが実施できている割合が高いのに比べて、グループ1・2は必要な取組みが実施できていない領域があることが分かった。
<2022年度調査DXの取組み内容と成果>
DXの取組み内容 | 既に十分な成果が出ている | 既にある程度の成果が出ている | 今後の成果が見込まれていない | まだ見通しはわからない | 取り組んでいない |
---|---|---|---|---|---|
1.アナログ・物理データのデジタル化 | グループ1 | ||||
2.業務の効率化による生産性の向上 | グループ2 | ||||
3.既存製品・サービスの高付加価値化 | |||||
4.新規製品・サービスの創出 | グループ3 | ||||
5.組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化 | |||||
6.顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革 | |||||
7.企業文化や組織マインドの根本的な変革 |
<DXの成果別に分類した回答企業数>
グループ3 | グループ2 | グループ1 | 成果あり対象外 | DX成果なし | ||
---|---|---|---|---|---|---|
日本 n=543 |
件数 | 25 | 45 | 102 | 26 | 325 |
割合 | 4.6% | 8.3% | 18.8% | 8.5% | 52.9% | |
成果あり(件数) | 218 | - | ||||
米国 n=386 |
件数 | 98 | 70 | 76 | 24 | 118 |
割合 | 25.4% | 18.1% | 19.7% | 6.2% | 30.6% | |
成果あり(件数) | 268 | - |
領域別比較(戦略)
- グループ1・2はグループ3と比べて、CDOや専門部署の設置などのオーナーシップの確立やアジャイルな取組み、高頻度な評価サイクルの取入れなど、DXに必要なマネジメントサイクルの確立が不十分である。
- グループ1・2がDXを推進していくためには、全社戦略への組込みやビジョンの共有と全社員による危機意識の共有と自発的行動、アジャイルな変革などが必要である。
グループ1・2とグループ3の差が大きい項目
- 継続的・安定的な予算確保
- CDO、専門部署の設置
- 新規製品・サービスの創出サプライチェーン
- DX推進プロセス全般
- システムを迅速に更新・拡張していく機能、部門間・社外も含むデータ利活用
- デジタルサービス事業の収入・成長率に関する成果評価
- 新しいビジネスの取組み全般
DX推進プロセスごとの達成度の割合(%)
領域別比較(人材)
- グループ1・2は人材像の設定、評価基準などの土台となる仕組みや取組みができていない。また企業文化・風土においては、チャレンジすることの尊重や最先端の仕事ができるなどのDXに必要な素地が不足している。
- DXを推進する人材の育成方法について尋ねた結果を比較すると、グループ1・2とグループ3では社外での取組み・活動への参加についての差が大きく、グループ3は社内にとどまらない取組みを実施していることが分かった。
グループ1・2とグループ3の差が大きい項目
- 人材像の設定
- 人材の育成施策の実践(全般)
- 評価基準の設定
- 企業文化・風土の状況:社内の風通し、チャレンジ、スキルの報酬への反映、最先端の仕事
会社として実施している人材の育成施策(%)
事例96
グループ企業向けIT支援事例
ルールの整備から内部の連携強化まで
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クライアント企業プロフィール
- 事業内容
- システム企画/開発/保守/運用
- 従業員数
- 約300人
背景
- 人手不足により問い合わせ対応が遅れてしまい、クレームが頻繁に発生していた。
- マニュアルが整備されていなかったため、業務の取り組み方にばらつきがあった。
ご支援内容
料金体系の整備
問い合わせ対応件数が膨大で業務負荷が高く、対応の遅れからクレームが多発していた
定額制やチケット課金制など問い合わせ頻度に応じた料金プランを整備し、問い合わせ件数を適正数に調整
内部の情報連携強化
情報連携不足により、クライアント内システム部の担当者が依頼内容を把握できていなかった
教育体制の見直しやエスカレーションルールの構築を通して、内部の情報連携を強化
業務品質の改善
ドキュメント化されたルールやナレッジが無く、属人的な対応で品質にばらつきがあった
マニュアルの作成やルールの整備を通して、業務品質の向上・安定稼働ができる環境を構築
成果
- 料金体系の整備により不必要な問い合わせを減らし、業務の効率化が可能に。
- 内部の情報連携の強化により、システム部の対応品質が向上。
- 教育の見直しによる業務品質の向上、安定稼働できる体制の構築を実現し、顧客満足度の向上に寄与。