2020年版ものづくり白書
2020年5月29日、政府の閣議決定を経て「ものづくり白書」が刊行されました。同白書では、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の拡大等、不確実性の高まる世界における我が国製造業の現状と課題を分析しています。
また、不確実性に対応するためには、製造業の「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」を高める必要があり、その際デジタル化が有効であると提言しています。今回は、その中から第1章第2節、第3節より一部抜粋してまとめさせていただきます。
不確実性の高まる世界の現状と競争力強化
- 不確実性の高い世界では、環境変化に対応するために、組織内外の経営資源を再結合・再構成する経営者や組織の能力(ダイナミック・ケイパビリティ)が競争力の源泉となる(注)。
- ダイナミック・ケイパビリティの要素は「感知」「捕捉」「変容」の三能力(デビット・J・ティース・UCバークレー校ビジネススクール教授)。
- これらの能力を高めるためには、デジタル化が有効。デジタル化の意味は、「ダイナミック・ケイパビリティの強化」にある。
(注)デビット・J・ティース・UCバークレー校ビジネススクール教授により提唱。
ダイナミック・ケイパビリティに必要な
3つの能力
- 脅威・機会の感知(Sensing)
- 機会を捕捉して、資源を再構成・再結合し、競争優位を獲得(Seizing)
- 競争優位性を持続可能なものにするために組織全体を変容(Transforming)
デジタル化により強化
-
- データの収集・連携
- AIによる予測・予知
-
- 3D設計やシミュレーションによる製品開発の高速化
- 変種変量
-
- 柔軟な工程変更
企業変革力を強化するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進
- デジタル化は企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化に有効。
- 一方、製造業のデジタル化やデータ活用は、製造工程についても、マーケティングとの連携についても十分に進んでいない。
製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業の割合(国内製造業)
製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業は減少
データ利活用に取り組んでいる企業の割合(国内製造業)
データを実際に役立てている企業の割合も伸びていない
- 平時の際の効率化や生産性を重視する企業のIT投資は旧来の基幹システム更新や保守が目的。
- 不測の事態に対する柔軟性を重視する企業のIT投資はビジネスモデル変革に向かっている。
平時の際の効率性や生産性重視の企業
=オーディナリー・ケイパビリティ重視の企業
…旧来型システムの更新・維持を目的にIT投資
不測の事態に対する柔軟性重視の企業
=ダイナミック・ケイパビリティ重視の企業
…IT投資の目的として業務効率化やコスト削減、
ビジネスモデル変革、人材育成に重点
(備考)「平時の際の効率性や生産性」を重視すると回答した企業を「オーディナリー・ケイパビリティ重視」、「不測の事態に対する柔軟性や俊敏性」を重視すると回答した企業を「ダイナミック・ケイパビリティ重視」と分類
資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019年12月)
出典:「2020年版ものづくり白書」 (経済産業省・厚生労働省・文部科学省)を加工して作成
事例55
管理会計最適化に向けた業務調査/RFP作成事例
経営管理のデジタル・トランスフォーメーションを推進!
経営判断の迅速化を目的とした管理会計業務のシステム化支援。
クライアント企業プロフィール
- 事業内容
- 施設管理等のメンテナンスおよび人材派遣
- 従業員数
- 約900名(単体)、約1,900名(連結)
背景
- 部門間で案件管理方法が異なっており、かつ月次決算の集計を手作業で行っているため、管理会計の運用が非効率で精度にも問題があった。そのため、十分な分析が行えず、迅速な経営判断ができない状況にあった。
- 今後、より強固な経営基盤を作り、中長期的なプランを立案する体制を構築するため、管理会計およびそこに至るまでの営業プロセスを可視化し、改善をする必要性が高まった。
業務調査の実施行程
成果
- 担当者へのヒアリング実施により、部門間での業務差異や管理会計における課題を明らかにし、改善の方向性を提示。
- 顧客が求める管理会計に必要な機能を洗い出し、構築対象になるシステムを評価。
- 管理会計のシステム化に向けたRFPを作成。