「人手が足りない」「採用しても定着しない」「業務が回らない」──こうしたお悩みをお持ちではありませんか?
日本企業の多くが、慢性的な人材不足という共通課題に直面しています。少子高齢化や定着率の低下、専門人材の確保難など、複数の要因が重なり、人材確保がますます難しくなっています。
限られた人材でどう成果を上げるか、今ある体制をどう強化するか。これはすべての企業に突きつけられている経営課題です。
その策の一つとして今注目されるのが、新しい業務支援モデル「BPaaS(読み:ビーパース)」です。
「BPaaSとは何か?」
「SaaSやBPOとどう違うのか?」
「BPaaSを使うメリットとは?」
本記事では、これらの疑問をやさしく解き明かしながら、“成果につながる業務支援”の仕組みをお届けします。
なぜ人材不足の対策に「BPaaS」なのか
人材不足対策における3つの視点
人材不足に対しては、以下のような3つの視点から多角的な対策が求められます。
- 社内人材の最大活用
リスキリング、ナレッジ共有、業務体制の見直しなどを通じて、既存の人材・体制をより効果的に活かす。 - 外部人材の有効活用
BPOや業務委託、フリーランス・副業人材の活用、外部企業との連携などで、必要な力を外から取り込む。 - 働き方・制度の見直し
柔軟な勤務制度やエンゲージメント向上施策により、人材の定着と流出防止を図る。
これらを組み合わせて初めて、持続可能な組織運営が可能になります。
外部活用の有力な選択肢「BPaaS」というモデル
前述した3つの視点の中でも、「外部人材の有効活用」をより戦略的に行う手段として注目されているのが、BPaaS(Business Process as a Service)です。
BPaaSは、クラウドサービス(SaaS)導入と業務設計、人的支援を一体で提供する新しいアウトソーシングモデルです。単なる作業代行ではなく、業務そのものを成果が出る形で運用・改善する仕組みとして機能します。
業務負荷を抑えながら、再現性ある成果と安定運用を実現できるBPaaSは、「少ない人員で最大の効果を出す」ための戦略的な選択肢として、多くの企業から支持を集めています。
BPaaSとは何か?
BPaaSの定義
BPaaS(Business Process as a Service)とは、「BPO」と「SaaS」を組み合わせた造語であり、単なる業務の外注やツール提供ではなく、業務プロセス全体をクラウド上で一体的に提供する新しいアウトソーシングモデルです。
クラウドサービス(SaaS)を業務のインフラとして活用しつつ、業務手順そのものを標準化し、再現性のある形で構築・提供します。
たとえば問い合わせ対応業務では、チケット発行から対応、エスカレーション、解決までの一連の流れをチケット管理ツール等のSaaS上でプロセス化し、オペレーターがその設計に沿って稼働することで、品質を維持しながら効率的に業務を進められるのが特徴です。
これにより「業務プロセスの定着」や「成果の最大化」が可能になります。
BPOとBPaaSの違いを理解する
「BPO」と「BPaaS」はどこが違うのか?
BPO(Business Process Outsourcing)もBPaaS(Business Process as a Service)も、企業の業務プロセスを外部に委託するという点では共通しています。しかし、決定的に違うのは「業務プロセスの実行環境」と「成果の捉え方」です。
比較項目 | BPO | BPaaS |
---|---|---|
実行環境 | クライアント独自の環境(オンプレや手作業含む) | クラウド上の標準化された業務基盤(SaaS活用) |
プロセス | クライアント仕様に準拠して構築 | 汎用業務プロセス+必要に応じた調整 |
柔軟性 | 高い(ただし属人化リスクあり) | 汎用性+拡張性に優れる(再現性あり) |
成果の捉え方 | 作業量・精度・稼働時間など | 業務プロセスの稼働+成果指標(KPI) |
役割分担 | 現場業務を代行 | 業務プロセスを設計・提供・改善 |
BPOと比較したBPaaSの特徴
インフラ不要・即戦力のリモート運用
BPaaSでは、在宅または専用センターからのリモート対応を基本とした運用を行います。クライアント側で新たにネットワークやPCなどのITインフラを用意する必要がなく、オフィスの拡張や物理的な受け入れ体制も不要です。これにより、スピーディかつ最小限の準備で運用を外部に委ねることができるのが大きなメリットです。
高品質×柔軟性を両立するクラウド型業務設計
BPaaSは「SaaS上でのプロセス実行を前提に業務プロセスを再設計する」ため、一度定着すれば業務品質のばらつきが少なく、可視化・改善がしやすいのがメリットです。柔軟性の観点でも、カスタマイズ可能なSaaSとノーコードツールを組み合わせることで、BPOと同等以上の柔軟性を持たせることが十分に可能です。
SaaSとBPaaSの違いを理解する
「SaaS」と「BPaaS」はどこが違うのか?
SaaS(Software as a Service)はツールの提供、BPaaS(Business Process as a Service)は業務成果の提供です。サービスと責任の範囲が以下のように異なります。
項目 | SaaS | BPaaS |
---|---|---|
サービス | ツールそのもの | 業務成果を生む仕組み全体 |
運用 | 自社が主体 | サービス提供側と分担 |
責任の範囲 | ツールの機能提供まで | プロセス成果への貢献まで |
SaaSと比較したBPaaSの特徴
SaaS=「道具の提供」、BPaaS=「業務の完成」
SaaSは「使い方」がユーザー側に委ねられます。一方、BPaaSは「どう使えば成果が出るか」まで踏み込んでくれるのが特徴です。料理で例えるなら、SaaSは高機能な調理器具。BPaaSは、食材選びから調理、提供までを一緒に行うシェフ付きのサービスです。
SaaSだけではカバーしきれないギャップを埋める
SaaSの利便性は間違いありません。ただ、それを継続的に活かすためには「人」と「プロセス」が欠かせません。BPaaSは、SaaSだけではカバーできないその“ギャップ”を埋める存在です。
BPaaSを活用するメリット/デメリット
BPaaS活用のメリット
メリット①:スピーディな外部委託化の実現
クラウド上に業務プロセスを構築するBPaaSでは、物理的な受け入れ体制やITインフラの整備が不要なため、最小限の準備で外部委託が可能です。特にリモート対応が基本となるため、拠点拡張の必要もなく、業務立ち上げのスピードと柔軟性に優れています。
メリット②:再現性の高い業務プロセスとナレッジ蓄積
SaaSを活用することを前提に、標準化された業務プロセスをクラウド上に設計・提供するのがBPaaSの特長です。そのため、対応品質のばらつきが少なく、誰が担当しても一定レベルの業務遂行が可能です。さらに、業務フローや対応履歴が蓄積されることで、継続的な改善やナレッジ共有の基盤にもなります。
メリット③:成果の可視化と経営レポートの質向上
BPaaSでは、KPIベースで業務状況をトラッキングし、成果や改善ポイントを数値で可視化できます。ツール単体では見えにくい「実際に業務がどう改善されたか」をレポートとして提示できるため、経営層への報告や意思決定の精度向上にも貢献します。
BPaaS活用のデメリット
デメリット①:初期導入の設計負荷
既存業務をSaaSベースに乗せるには、業務フローの整理や移行設計に一定の工数がかかります。
デメリット②:パートナー選定の重要性
提供企業によって、業界理解や柔軟性、改善力に差が出るため、業務内容に合ったパートナー選びが不可欠です。
デメリット③:セキュリティ・データ管理の留意点
クラウドを活用する以上、セキュリティポリシーとの整合性や、データの保管・権限管理などに十分な配慮が求められます。
デメリット④:SaaS製品の継続性リスク
使用するSaaSが将来的にサービス終了や仕様変更となる可能性もあるため、代替手段やベンダー選定の慎重さもポイントになります。
BPaaS活用の具体事例
事例①:MAツールが定着しなかった中堅製造業
導入して2年経つMAツールが、メール配信機能以外使われておらず、営業連携もうまくいかない状態だったマーケティング部門。BPaaS導入により、シナリオ設計・コンテンツ運用を丸ごと支援し、半年でホットリード転換率が2倍に。
事例②:SFA活用が進まなかった大手医療機器メーカー
SFAツールを導入したものの入力率が低く、活用が進まなかった営業部門。BPaaSで営業支援チームを立ち上げ、入力しやすいUI設計支援と週次モニタリングを行ったことにより、運用定着と売上予測精度向上を実現。
事例③:属人的な運用だった中堅ITサービス企業
問い合わせ履歴が共有されず、対応品質にバラつきがあったCS部門。チケット管理SaaSを含めたBPaaS導入により、テンプレ整備・FAQ強化・品質モニタリングを実施。1年で顧客満足度が15%向上。
まとめ:人材不足時代に求められる「仕組み」の力
人材不足が深刻化する中、企業に求められているのは「人を増やすこと」ではなく、「限られた人員でも安定して成果を出せる仕組みをどう構築するか」です。
BPaaSは“人に頼らず成果を出す”仕組みそのものであり、人材不足時代における新しい業務体制の形と言えるでしょう。